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食べたかったもの

寒さのピークも過ぎ、春の香りがほのかに感じられる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

先日、愛知県岡崎市の【平安会館 ソサイエ岡崎縁〜えにし〜】にて、92歳のお母様のご葬儀をお手伝いいたしました。

故人様には、三人の娘様と一人の息子様がいらっしゃって、息子様が喪主を務められました。
三人の娘様はとても仲が良く、なんともにぎやかなお声が控室から聞こえてきていました。
物腰柔らかな方々ばかりで、きっと故人様もお優しい方だったに違いないと感じられました。

そんなご家族様のご意向として、シンプルな式を希望されていました。司会者のナレーションも不要で、特別なことはなくていいということでした。

しかし、ご家族様のお言葉の中で一つ、気になったことがございました。

「最後、バナナを食べたいと言っていたなぁ…。」

故人様の好物は、バナナとケンタッキーのフライドチキン、喫茶店のナポリタンでした。なかなか脂っこいものがお好きだったようです。

フライドチキンやナポリタンを、故人様が好きだからといってお柩に納められるよう準備したり、飾ったりするのは、シンプルにしてほしいというご家族様の想いに反することだと感じました。
むしろ、ご家族様を嫌な気持ちにさせてしまうかもしれないとも思いましたが、せっかく教えてくださった故人様のことを、聞くだけで終わりにはしたくありませんでした。
「最後に食べたかったというバナナなら…」と考え、ご準備いたしました。

そして、迎えた葬儀式…。

お寺様のお勤め後は、ご親戚やご町内から供えられた生花をお柩へ手向けていただき、そのとき、バナナも一緒に入れていただきました。

「おばあちゃん、嬉しいね。こんなに花がいっぱいだよ!」
「おばあちゃん、食べたかったバナナ、ここにあるからね。食べてよ!」

皆様それぞれに、故人様にお声を掛けて、お花を手向けておられました。にぎやかに、温かく、最後のお別れの時が過ぎていきました。

【平安会館 ソサイエ岡崎縁〜えにし〜】でお世話になりました皆様、どうかご自愛くださいませ。

平安会館 ソサイエ岡崎縁〜えにし〜

担当 登地 夏生


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